むかしむかしで始まるかと言われればそうでもない、わりと最近のお話です。
あるところに、若草色の大きな堅い甲殻で体をつつまれたとても強そうなポケモンがいました。
彼はとある組織に所属しています。
彼の種族はバンギラス。
「でんせつ」と呼ばれるポケモンに近いチカラをもっているとされます。
彼は、薄暗い部屋で書類をパラパラとめくりながらため息をつきます。
「あぁ…この計画は…」
書類を見ると、たくさんの小型ポケモンが載っています。
性別と年齢、体系などは事細かに記されていますが名前は載っていません。
「いったい…どういうことなんだ…?」
分厚いかと言われればそうでもなく、薄いかと言われればそうでもない資料です。
バンギラスはたくさんのポケモンが載っていた紙の束を閉じ、持っていたもう片方の資料に目をやります。
そこには、人間の言葉が書かれていました。
当然彼はポケモンなので人間の言葉はまったく勉強していません。
なので、挿絵を見ることにしました。
そこには、
メタモンの絵と、
注射器と、
注射器に刺されている人間の腕と、
縄はしごのような物がねじれている絵がありました。
バンギラスは、よくわかりませんでした。
彼には、人間の言葉を読める小さな友達がいます。
でも資料を持っていったら、持って行った事をバレてしまうので置いて行きました。
彼は、「資料室」とポケモンの言葉で書かれた部屋から出ました。
本当はここに入っては行けません。
ここに入ると、とても怖い罰があるのですが、
「バレなけりゃ罪になんねぇだろ」
と彼は思っています。
自分の部屋に戻ろうと思ったその時でした。
「ねぇ、なにしてたの?」
女の子のようにも聞こえるし、男の子の声にも聞こえるような声が言いました。
彼には聞き覚えがありました。
「ったくよぉ…てめぇ、でかい図体のわりに神出鬼没すぎやしねぇか?カイリューよぉ」
彼は、質問に質問で答えました。
「君も十分大きいよ」
カイリューと呼ばれたオレンジのような体色のドラゴンタイプのポケモンは言い返しました。
カイリューの体はバンギラスと対照的で、しなやかに曲がります。
それでも守りが弱いわけではなく、衝撃を吸収するきめの細かい鱗が体を覆っていて、生半可な攻撃はまったくとおさないのです。
「まぁいいや、何してたの」
笑顔に影ができていて、威圧感をかもしだしています。
「…てめぇにゃ関係ねぇよ」
隣を通ろうとしたそのときです。
めこり。
普通なら絶対に聞けないような音がしました。
音のした箇所を見ると、バンギラスのわき腹にカイリューの手の先がめりこんでいました。
若草色の岩盤のような甲殻にはひびが入り、欠けています。
さらに、甲殻を貫通していました。
薄れゆく意識の中、最後に頭に浮かんだのは小さな友達でした。
おわり
[1回]
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